2017年8月7日月曜日

親指〆器 1st full album "始祖は唄う" アルバムレビュー

初めまして、香川司と申します。

先日、Twitterにてご報告させて頂いたように、不思議なご縁があって
日本のブラックメタル?プログレメタル?(もはや親指〆器というジャンル)バンドである親指〆器さんの、待望の1st full albumのキャップ(帯)の文章を書かせて頂きました。
採用して頂いたものが、こちらになります。

"混迷を深める世界に突如として現れし救いの夢幻(おんがく)
あらゆるジャンルを超越し人生を奏で上げる親指〆器 待望の1stアルバムついに完成"

正直、"始祖は唄う"の魅力の全てを上手く要約することが出来ませんでした。
あらゆる面に於いて傑出した出来を誇るため、どうしても抽象的になってしまうのです。

そういったある種の消化不良のような気持ちを抱えつつ、また厚かましくも親指〆器さんの代表である望意恵さんに
「キャップ作成の際に頂いた楽曲データ(実に850MBにも及ぶ)を元に、この作品の世界最速(解禁前)レビュー記事を書かせて頂きたい」
とお願いしたところ、なんと快諾して頂けたため、今回このような場を設けることが出来ました。

前置きが長くなりましたが、以下に僭越ながらレビュー記事を書き認めましたので、購入することが確定しているファン諸氏並びに、購入を検討されている方々の参考になれば幸いです。

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1.懐古 -Time- 1'10"
SE、アルバムのジャケットを連想させる環境音・子供が戯れるような声。刻む時計の音を聴けば、親指〆器を追いかけてきた私を含むファン諸氏は、この作品がコンセプトアルバムであることを察することだろう。


2.背理の奏 -Astronomy- 10'21"
一小節目で決した、このアルバムは我々の期待を大幅に上回っているものであると…!
カタルシスなギターサウンド・ヘヴィネスで明けるキラーチューンは、進化(深化)した親指〆器を端的に表現しているように思えた。
水晶のような透明感で鬱くしさを映し出すシンセ・哀愁溢れるリードギターが個人的にツボで、時間を忘れて何度でも聴いてしまう、大作だ。


3.カリユガは栄世の為に -Utopia- 6'01"
YouTubeにて先行配信済みの作品であるが、シンセの再録に伴うリマスターを経て非常に音の分離が良くなり、より一層魅力が増した。
このシンセの音作りが見事と言う他無く、先ほどの曲とは打って変わり、鈍色に輝くような個性を発揮している。


4.こころ -Paradise Lost- 8'41"
こちらも先行配信済みの曲であるが、やはりCD音質で聴くと全く違うなと再認識させられる。
特にクリーンパートのベースは特筆すべきで、歌声に絡みつくベースが堪能できる。ベースとボーカルを兼任しているからこそ成し得たことなのだろうか。
またこの曲もシンセの働きが大きく、荘厳な様式美を感じられる。


5.オルゴール -Physica- 10'01"
名曲揃いの今作であるが、個人的にはこの曲が一番面白いと感じた(気に入っているとまで言い切れなかったのは7曲目の為)。
一般に人が音楽に求める要素と云うものは把握し切れないが、少なくとも僕が音楽を聴いていて楽しいと思う要素が、この曲には全て含まれている。
それでいて曲として成立しているのだから、驚くほか無い。
異次元の完成度を誇るこの曲に関しては、あらゆる讃辞を以てしても不足がある為、この辺で容赦願いたい。
兎も角聴いて欲しい、聴けば分かる。と言ったところ(レビューとは…)。


6.天球に手を -Orion- 6'21"
この曲も先行配信済みのものであるが、この曲こそ高音質にて楽しむことを推奨したい。
反則級のクリーンパートから超反則級ピアノソロ。
正直このパートを高音質で聴く為だけにこのCDを買っても損はない。
ちなみに筆者は無事涙腺崩壊した。


7.月光蝶 -Sephirothic- 7'11"
最後にこんな曲を用意するとは、何ともニクい演出だと思う。
このフィナーレを、リスナー諸氏の感動を損ねる行為は控えたいので、ここでは多くを語ることをしない。
ただ一言、僕の葬式ではこの曲をかけて欲しい。



総評
もはや言うまでもなく、傑作である。
冒頭で述べたように、この作品はコンセプトアルバムであると思われるのだが、具体的にどのようなコンセプトであるかは掴み切れていない。
これを書きしたためる段階で何十回と聴いているのだが、未だに聴く度に新たな発見がある位だ。

ただ一つ、確信めいたものがあるとすれば、
"今作は人生のような作品である"ということ、もう少し正確に表現すると"人生のあらゆる要素を音楽にて表現することに成功した"ということ。

些か漠然とし過ぎているので、詳細に述べるが
人生とは時の積み重ねであるとすれば
あらゆる時が人生となる、と言える。
朝焼けが照らす濡れた草木、空の高さや灼けた大地を撫でる風、沈みゆく哀愁や、月明かりの透明感や妖しさ、流れる雲
今作では、こういった日々の情景がイメージとして浮かぶ。
親指〆器が時を表現しようとしていたのならば、要所で使われる時計の音についても筋が通る。

等と、僭越ながら考察させて頂いたものだが、是非ともリスナー諸氏にもご考察頂きたい。



若干、グダグダであったり冗長なレビューとなってしまいましたが、以上にて
親指〆器1stフルアルバム "始祖は唄う"のレビュー記事とさせて頂きます。

1stから異例の完成度を誇る彼らが今後どのように活躍してゆくのか…
我々が歴史の証人となることは間違いないでしょう。


最後に一言

親指〆器は人生!

お粗末様でした。